空中日記

日記というからには毎日書きたい

0183 一過の空【ANNIK HONOREのepと解散によせて】

ANNIK HONOREドラムのけんしろう君から新しいepのライナーノーツをブログ上に書いて欲しいと頼まれた。これは本当に素晴らしいバンドの素晴らしい楽曲5つが収まった素晴らしい作品。食べる金に困ってない人、音楽好きな人は自分の手元に置いていて損はないと思います。ぜひ、聴いてみて頂きたいです。

soundcloud.com

元々抑制が効いている印象があったリズムセクションはさらに研ぎ澄まされ、楽曲へ縦横無尽に彩りを散らすギターワークも相変わらず冴えまくっており、翼くんの憂いと優しさを帯びた声とメロディーについては常人と違う世界を見てしまったかのようなすごみを感じる。メンバー全員で楽曲に自分たちの手垢をしっかりつけているので、単純にシューゲイザーだとかベッドルームポップだとかみたいに音楽性をカテゴライズするのは難しくなった。それに加えて今作はとにかくメロディーが素晴らしいので、より多くの人の琴線に触れ得る、開かれた作品となっているのではないだろうか。

特にティーンエイジ・ファンクラブを彷彿とさせる心地良い歌とスピーカーがぶっ壊れたのかと思うような爆発的な音像とが同居した『My Girl』と、1stアルバムでは弾き語りだったものをバンドで再録した『June』の終盤2曲については、いわゆるインディーロックバンドが紡ぎ出した音楽として一つの完成系を見たとさえ思った。

しかし、なんと今月25日のライブで解散してしまうらしい。結果的にこの音源が最後の置き土産になるということなのだろう。

先にその連絡をもらってからこうして書いている今まで、数日たってもあまり冷静になれていないのが正直なところだ。彼らの存在は仙台で音楽続けている人間として、希望そのものだった。それはひとつ「確かなこと」と言わせてもらおう。彼らと出会えた幸運な仲間・音楽を愛する人々にとっても、きっとそうだったんじゃないかなとも思う。

ANNIK HONOREの音楽は、楽しいとか切ないとか元気出た!みたいな単純なものではなく、おのれ自身の中にある、もっと複雑で言葉にしにくい気持ちに出会わせてくれる。それは、彼ら4人がそれぞれに今ここで生きることの苦難を感じながらも、バンド・音楽・もっと言うなら人生に対して真摯に向き合ってきたことで滲み出た人間味から来るものだ。だからこそ、これまで彼らが描いてきた軌跡は本当に美しい。カッコ良すぎだよ。